
運転免許不要で乗れる自転車は、子どもからお年寄りまで、さまざまな世代の移動手段として重宝されています。 自転車は身近な乗り物ですが、車やバイクと同じく運転中に交通事故を起こすリスクがあり、人や物を傷つけて賠償責任が発生する可能性もあります。 自転車事故による治療費や賠償など、もしもの場合に備えるために加入するのが自転車保険です。近年は加入を義務付ける自治体も増えており、その流れは全国的に広まっています。 この記事では、自転車保険の必要性や義務化の背景、加入しないリスクを紹介します。
自転車保険とは

そもそも自転車保険とは、自転車を運転中に事故を起こした場合に、自分のケガの治療費や相手への損害賠償に備えるために加入する保険のことです。
自転車保険は、大きく分けると傷害保険と個人賠償責任保険があり、ほとんどの自転車保険はそれぞれがセットになっています。
ここでは、傷害保険と個人賠償責任保険の特徴と補償内容を解説します。
傷害保険とその補償
自転車保険の傷害保険とは、自転車事故によって自身がケガをし、通院や入院をした場合や死亡・後遺障害を負った場合に保険金が受け取れる保険です。
加入する傷害保険によって補償内容は異なるものの、一般的には以下のような補償を受けられます。
- 傷害死亡保険金
- 傷害後遺障害保険金
- 傷害入院保険金
- 傷害通院保険金
- 傷害手術保険金
たとえば、自転車走行中に転倒や誰かとぶつかって自身がケガをした場合に、通院が必要になると傷害通院保険金を受け取ることができます。
個人賠償責任保険とその補償
自転車保険の個人賠償責任保険とは、自転車事故によって他人にケガをさせたり、物を壊したりなどで損害賠償金が発生した場合にその費用を補償する保険です。
加入する個人賠償責任保険によって補償内容は異なるものの、一般的には以下のような補償を受けられます。
- 損害賠償責任への補償
- 弁護士費用の補償
個人賠償責任保険のプランによっては、弁護士に依頼した際にかかる費用を補償してもらうことも可能です。
自転車保険の義務化について

自転車保険の必要性が高まっている理由の一つに、全国的な自転車保険の加入義務化の流れもあります。
ここでは、自転車保険義務化の概要について詳しく解説します。
自転車保険の義務化とは?
自転車保険の義務化とは、被害者の救済や加害者の経済的負担を軽減することを目的に、自転車に乗るすべての人に自転車保険の加入が義務付けられることです。
2015年10月に兵庫県で義務化されて以降、全国の自治体で義務化の流れが広まっています。
国が定めている制度ではなく、自治体が定めている制度であるため、義務化のルールは住んでいる地域によってルールが異なります。
自転車保険の加入を義務付けていないものの、自転車保険の加入を努力義務としているところもあるため、自治体のルールを確認しておきましょう。
義務化の対象となる人
自転車保険の義務化の対象となる人は、自転車の利用者のみで、その自治体に住んでいる人全員が保険に加入しなければならないわけではありません。
ただし、その自治体の住民でなくても、義務化されている地域を自転車で通る場合は、自転車保険の加入が必要なケースがあります。通勤や通学、観光で他の地域に行く場合は、あらかじめ自転車保険に入っておくと安心です。
加入しなければならない保険の種類
自転車保険の義務化で加入しなければならないのは、事故相手への損害が補償される個人賠償責任保険です。
そのため、自転車保険の個人賠償責任保険をはじめ、他の保険に付帯する特約、TSマークでも問題ありません。
ただし、個人賠償責任保険だけだと自分への補償はないため、自身のケガに備えたい場合は傷害保険に加入しましょう。
また、保険金が支払われる要件の厳格さも保険によりけりなので、保険加入していても要件が厳しければ事故発生に対して保険金が支払われない可能性もあります。そのため、個人賠償責任保険に加入するだけでなく、補償金額もチェックし、可能であれば1億円以上に設定されている保険が安心です。
自転車保険に加入しない場合の罰則
自転車保険が義務化されている自治体であっても、自転車保険に加入せず自転車に乗っても現在のところ罰則はありません。
自転車事故の補償をする保険はさまざまな種類があり、加入者が自転車を利用する本人でなく、家族が契約しているケースもあります。利用者ごとに自転車保険の加入状況を確認することが難しいため、罰則を設けることも困難です。
しかし、自転車にはさまざまなリスクが生じるため、義務化の有無に関係なく、自転車保険に加入して備えるのが望ましいといえます。
自転車保険に加入する必要性

自転車事故は、どれだけ自転車の運転に慣れている人でも、いつどこで起こるかわかりません。
高額な賠償に備えるためにも、そして自転車保険の義務化に対応するためにも、自転車保険に加入する必要があります。
高額な賠償に備える
自転車保険の加入は、高額な賠償への備えとしても必要です。
自転車の事故で、死亡事故や相手に重篤な後遺症が残ってしまった場合、数千万円を超える高額な賠償金が発生するリスクもあります。
自転車による事故であっても、免許が必要な車やバイクの事故と賠償金の計算方法は変わりません。自転車保険に加入していなかった場合は、すべての賠償金を自身で負担する必要があります。
そうならないためにも、自転車保険に加入し、もしもの場合に備えることが大切です。
実際に起こった高額賠償の事例は、以下の記事内でもいくつか紹介していますので、あわせてご参照ください。
補償で自身や家族の負担を減らす
自転車保険に加入することは、事故によってケガをした際に、自身や家族の負担を減らすためにも大切です。
自転車事故で自身や家族がケガをした場合、入院や手術、通院などが必要になるケースがあります。
その際に仕事を休むことになったり、治療費がかかったりと、自身や家族の金銭的な負担が大きくなる場合もあります。このような場合には、入院や手術、通院などの補償が受けられる自転車保険に加入しておくと安心です。
毎年重大な自転車事故が発生している
日本では毎年数百人以上が自転車乗用中に亡くなっており、いつ自分や家族が重大な自転車事故に巻き込まれてもおかしくありません。
さらに近年は自転車対歩行者の事故が増加傾向にあり、自転車関連の事故のうち自転車対歩行者の割合は、平成25年が3.4%だったのに対し、令和5年は4.9%となっています。(令和6年3月7日警察庁交通局「令和5年における交通事故の発生状況について」より)
自転車事故を起こした場合に、経済的な負担軽減や被害者の救済のためにも自転車保険は必要です。
自転車保険の種類

自転車保険といっても、専用の自転車保険もあれば、他の保険に特約の形で付帯されたり、契約形態が契約団体保険となる場合や、TSマークの付帯保険などがあります。
ここでは、自転車保険の種類を解説します。
保険会社の自転車保険
保険会社の自転車保険は、保険会社が提供している自転車専用の保険サービスです。
自転車事故に特化した保険であり、予算に応じて補償内容をカスタマイズできます。中には弁護士の示談交渉サービスや、ロードサービスなどが付帯されている保険もあります。
プランによっては、個人だけでなく家族全員の自転車事故によるケガや被害者への賠償に備えることも可能です。
他の保険に付帯されている特約
自転車保険は、自動車保険や火災保険などの特約として付帯されている場合もあります。
自転車保険の特約の対象となるのは、自動車保険や火災保険に加入している人やその家族です。
ただし、特約の補償内容は加入している保険によって大きく異なり、補償内容が損害を与えた相手のみで、自身のケガに対して補償を受けられないケースもあります。
特約だけでは自転車事故に十分に備えられない可能性もあるため、補償内容をチェックしておくことが大切です。
団体で加入する自転車保険
団体で加入する自転車保険とは、会社などの団体の従業員向けや、PTAや学校が窓口となって加入する保険です。
団体によって割引が適用され、個別加入に比べると価格が抑えられる傾向にあります。中には団体に属する人だけでなく、その家族も補償を受けられる場合もあります。
TSマーク
TSマークとは、自転車安全整備士が点検確認した自転車に貼付されるもので、賠償責任保険や傷害保険などの自転車保険が付帯されています。
TSマークには青色、緑色、赤色の3種類があり、それぞれの色ごとに補償内容が異なります。
以下にTSマークごとの補償内容をまとめています。
TSマークの色 | 賠償責任補償 | 傷害補償 |
---|---|---|
青色 | 死亡・重度後遺障害:補償限度額1,000万円 |
|
緑色 | 死亡・傷害:補償限度額1億円(示談交渉サービス付) |
|
赤色 | 死亡・重度後遺障害:補償限度額1億円 |
|
TSマーク付帯保険に加入するためには、自転車安全整備店で自転車の有料点検整備を受ける必要があります。
有効期限は1年であるため、1年に1回のペースで点検整備を受けると、自転車に安全に乗れて事故にも備えることが可能です。補償内容も充実しているため、自転車事故による損害は、TSマーク付帯保険だけでも十分に備えることができます。
さらにTSマーク付帯保険は、点検整備を受けた自転車本体に適用されるため、1台の自転車を複数人でシェアするような場合にも安心です。
自転車事故を予防するために

自転車保険に加入しても、その保険を使うことがないように事故を防ぐことが大切です。
ここでは、警察庁が定めた指針である自転車安全利用五則を参考に自転車事故を予防するポイントを紹介します。
自転車は車道の左側通行が原則
自転車は道路交通法上、軽車両に分類されています。
そのため、歩道と車道の区別のあるところは、原則として車道の左側を通行しなければなりません。
ただし、以下の場合は自転車で歩道を通行することもできます。
- 道路標識等で指定された場合
- 運転者が6歳以上13歳未満または幼児の場合
- 運転者が70歳以上の場合
- 運転者が一定程度の身体の障害を有する場合
- 車道または交通の状況からみてやむを得ない場合
歩道を通行する場合は車道寄りの部分を徐行しなければなりません。また、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止が必要です。
信号と一時停止を守って安全確認
信号機のある交差点では、信号が青になって安全を確認したうえで通行しましょう。
自転車は車両用信号に従うのが原則ですが、歩行者・自転車専用と表示されている信号機や横断歩道を渡る場合は歩行者用信号に従います。
また、一時停止の標識がある場所では、一時停止を行い、安全を確認してから進みます。
夜間はライトを点灯
夜間は他から自転車が見えにくくなるため、安全のために夜間はライトを点灯し、反射機材を備えた自転車で走行しましょう。
夜間に自転車を運転する際にライトを点灯しなかった場合は道路交通法違反となり、5万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。
飲酒運転の禁止
飲酒して自転車を運転することは法律で禁止されており、酒気帯び運転および酒酔い運転ともに罰則の対象です。また、自転車の飲酒運転をするおそれがある者への酒類の提供や、自転車を提供することも罰則となります。
ヘルメットを着用
自転車事故で死亡した人の多くは頭部に致命傷を負っており、事故の際に死亡やケガのリスクを減らすためにもヘルメットの着用が必要です。また、自転車に乗る際のヘルメットは、SGマークなどの安全性を示すマークがついたものを使いましょう。
なお、ヘルメットの着用は努力義務となっており、他人に自転車を貸す際にもヘルメットを被せるように努める必要があります。
まとめ
自転車事故はどれだけ注意して運転していても、事故のリスクを完全になくすことはできません。重大な事故を引き起こしてしまい、多額の賠償責任を負ったり、家族に大きな負担をかけたりする可能性もあります。
そのような事態も想定し、自転車保険に加入して、もしもの場合に備えることが大切です。
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